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新卒入社した会社は零細企業だったが逆に自分はそれがラッキーだった

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大学生として就職活動をしていたのは、もう11~12年ほど前になる。

当時はリーマンショック後のいわゆる”就職氷河期”で、多くの企業が採用活動を取りやめたり、内定取り消しなどの社会問題もニュースでよく取り上げられていた。

自分は元々音楽関連の仕事に憧れて地元の芸大に通ったのだが、在学中に地元のFM局でアルバイトをしたり、テレビやラジオCMの整音を行う会社のインターンシップに参加する中で、音関係のキャリアに進むのはやめようと直感的に感じていた。

そんな中、大学3年生の時に同級生が個人で作っていた学内版mixiに衝撃を覚え(自分の技術だけでSNSが作れるなんて凄いと思った)、就職はWeb関係にしようと考えるようになった。

もちろん最初からWebやデザインを学んでいる工学系や美大生なんかと比べると、大した技術も作品も無かったので就職活動は、リーマンショックに関係なく苦労したわけだが、最終的に卒業間際に1社、内定をもらうことができた。

そこは従業員がたったの5人しかいない小さな広告代理店で、自分以外に先輩デザイナーが一人という環境だった。残りは社長と営業が1人ずつ、そのほか自社で運営する通販サイトの発送業務などを行う女性スタッフが2名だけという超が付くほどの零細企業だった。

零細企業に入社したことで受けられた恩恵

だが今考えると、この環境がものすごくラッキーだったように思う。

なぜならたった5人しかいないこの会社では、入社数日目から一人のデザイナーとして早速案件を任せてもらったからだ。

 

最初は会社の近所にある飲食店や美容院の名刺・チラシ作りといったものだった。

先輩デザイナーが過去に制作したPhotoshopやIllustratorなどのデザインファイルをもらっては、どのように作られているか見よう見まねで模倣しては、自分の技術として吸収していった。

さらに「自分なら今回こうアレンジしよう」なんていうチャレンジも自分の裁量でできた。

もちろんいくら名刺やチラシといった一般的に小規模と言われるような案件であっても、アート(自己表現)ではなくデザイン(課題解決)であり、お金をもらって制作するビジネスである以上、そこには客観的な目線も大事になってくる。

仕事中はもちろん仕事終わりや休日なんかでも、とにかく今目の前の制作をしているデザインの参考となる書籍や画像を漁りまくったのを覚えている。

 

入社して2~3ヶ月が経った頃には、紙媒体だけでなく、Webデザインやコーディング業務にも着手していた。

普通に考えるとつい数ヶ月前まで大学生だった人間に、裁量の大きい仕事を任せてもらえる環境なんて、一般的な会社ではまずありえないと思う。

(実際その後のキャリアで在籍した社員数1,000人以上の上場企業では、新卒の新入社員は入社後2~3ヶ月までは研修期間だ。)

入社して2年も経ったときには、数十ページ程度のコーポレートサイトやECサイト、販促用のランディングページなどは一通り自らの手で作れるまでになっていた。

スキルだけでなくその他に得られたもの

もう一つ新卒で零細企業に入社して良かったと思うことがある。

それは、数多くの案件に携われたことでたくさんのビジネスモデルを知れたことだ。

 

これは今現在Webマーケターとしてのキャリアを歩んでいる中で、これは大きく役に立っているように思う。

具体的に例を挙げると、当時まだライザップが世にTVCMを打つ前に、パーソナルジムを経営するトレーナーのWebサイトを作ることがあった。(今でもその方はトレーナー界隈では有名な方だ)

サイト内で訴求する、”結果が出なければ返金”というビジネスモデルを初めて見た時、「いや、しっかり食事制限・トレーニングすれば全員結果出るはずだよな。良いビジネスアイデアだ。」と直感的に思った記憶がある。

他にもBtoC領域で言えば、ダイエットサプリや男性向け精力剤の通販、特定人気車種しか扱わない中古車販売などもWebとの相性の良さを感じた。

BtoB領域で言えば、制御盤や油圧プレス機メーカー、段ボール製造機の製造メーカーなどの案件にも携わった。

零細企業だったからこそ、企業や仕事を選ぶことなく様々な案件やビジネスモデルに触れられたのは、Webマーケターとして世の中の仕組みを知る良いきっかけにもなった。

先輩デザイナーの退職

入社して2年半近くになった時、突然先輩デザイナーが退職した。

制作においてはもちろん、時には仕事観についても色々教えてくれた本当に尊敬できる先輩(上司)だったので、そのショックは大きかった。

当時デザイナーを補充させるほど会社自体も大きくなっていなかったため、先輩が抜けるとデザイナーは自分一人になる。そうなると、もはやこの会社に居る意味が無いと感じた。

 

だが「一般的に新卒入社から3年以内に30%は退職する」という、採用市場でよく見かけるデータ?フレーズ?みたいなものを見かけ、就活で苦労した自分はなりたくないなと、良く分からない反骨心みたいなものがあり、もうあと1年は頑張ろうと決めた。

 

その後1年間も自分としては大きい1年となった。それはデザイナーの範疇に収まらない仕事に触れる機会が生まれたからだ。

社内にデザイナーが一人しか居ないため、営業が持ち帰ってきたクライアントの要望をワイヤーフレーム(設計図)に落とし込む機会が増えたり、制作周りの見積書の作成、また時にはクライアントへの説明や撮影の同行なども行った。

さらに案件が立て込んだ時には、当然一人で制作することは難しいため、ディレクター的な立ち位置で外部のデザイナー/エンジニアに仕事を依頼するケースも徐々に増えていった。

 

最終的には、携わる案件の規模をもっと大きくしたい(大きな実績を作りたい)という想いから、入社3年半が経ったところでナショナルクライアント(大手企業)を中心に案件を手掛ける制作会社に転職することになるが、最初の3年半での経験はスキルもキャリアも無かった自分に大きな自信をもたらしてくれたように思う。

むしろそれだけでなく、今のWebマーケターとしてのキャリアはもちろん、学生時代にぼんやりと描いていた”起業”というハードルもグッと下げてくれたのだ。

新卒入社のメリット

これまで書いてきたように、自分は新卒で零細企業に入社したことで、短い期間で多くのことができるようになり、自分のスキルに自信が付いたし、それは間違いではなかったように思う。

だが一方でその後のキャリアで在籍した、社員数1,000人以上の上場企業では、新卒から入社した社員の方が優遇されるケースというのも少なからず見かけた。

端的に言うと、新卒入社の社員の方が出世しやすい傾向にあるということだ。

もちろん中途でも能力の高い社員で出世する人もいたが、やはり新卒から入社している人間の方が経営層や役員陣からは可愛く映る(会社に対する忠誠心が高く見える)のか、能力以上にポジションが与えられる場面は多かったように思う。

こうした状況は僕の勤めていた会社だけでなく、多くの会社でもおそらく同じであろう。

つまり、企業の中で出世コースを歩みたいという想いがあるのなら、新卒で安定感のある大企業もしくは将来性のある会社に入社して、その中で頑張るというのも悪くない選択肢のように思う。

自分の場合は大した大学も卒業しておらず、ましてや勉強せずに好きなことだけをしてきたので、その資格は無かった。

どこで働くかよりもどうなりたいか

結論としては、このありふれた見出しのようなことなのだが、自分の場合はかなり恵まれていたし、ラッキーだった。

学生時代にキャリアについて真剣に考えたこともなかったので、成り行きで今に至っているだけである。

 

自分がリーマンショック後の就職氷河期に見舞われたように(実際には前述したとおり氷河期はあまり関係ないが…)、今コロナ禍で就職に苦しむ学生も少なくないだろう。

何社も何社も面接して採用を見送られる大変さはもちろん、そもそも自分自身と真剣に向き合うこと自体、それなりの労力を使うものである。(自分自身がどうなりたいかなんて、キャリア11年の今でも時々悩むようなことだ。)

 

けれども就職活動を継続さえすれば、きっとどこか拾ってくれるところは見つかるだろうし、その環境で次のキャリアにつながるスキルや成果を残すことが特に最初の会社選びでは大切になってくるように思う。

もちろん高校~大学時代に勉強を頑張ってきてそれなりの学歴があれば、大企業に就職してその中でキャリアを積むという道も素晴らしいと思う。

 

という訳で今回は、キャリアの最初の一歩となった新卒で入社した会社での経験を書いてみた。

就活で行き詰っている学生や、一社目・二社目の転職で悩んでいる方の参考になれば幸いだ。

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この記事を書いた人

OKASAN

IT業界で転職4回
OKASAN

名古屋出身 1987年生まれ 1児のパパ
たった5人の制作会社から従業員1000人以上の上場企業まで、IT業界で4回の転職を行う。2020年より独立・会社設立

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